雪、か。

  関東地方南部で雪が降るってのはそうそうある事ではなく、15cmも降れば交通機関は麻痺し、人は転んで怪我をし、交通事故も起こる…つまりは慣れない事が突然起こり、混乱して…阿鼻叫喚ですな。
  新聞配達も例に漏れず、雪中配達なんて滅多な事では無い非日常な事。私自身(雪降った当時を基準に)2年ぶりに雪中配達となる事に。
  しかし、その2年前よりも部数は倍増している…その上ノウハウなんて皆無に等しいから右往左往してしまった…ただ、冷静に「記念撮影はしておくか」とだけは思ったのでした。
 
  「それ程度の事で大騒ぎするなんて」と雪の多い地方の方々は言われますがそれは違うでしょう、比べる基準てぇものが。15cmでも慣れない事では十分大騒ぎする事なのです。都会に慣れない、山奥から出てきた方が、東京の訳のわからん地下鉄網に辟易するのと同じ様なものですって(違うかな…?)。
 
  とにかく難儀したのでした。

1998年1月8日木曜日 曇 後 雪
序章・修羅場の予感
  「雪が降る」を知るにいたり、明日の配達はどうなるのかと考える…しかし2年前の事を思い起こしても「辛かった」しか思いつかない(^^;;  なにせ当時240部程度しか配達しておらず、時間が掛かったとは言え3時間程度で終ったのだから。
  しかし今回は部数倍増、新聞の到着時間によっては何時間掛かって何時に終わるかなんて想像もつかない。ただ指をくわえて明日を迎えるしかない、と諦める。
  そして…15:00を過ぎた頃から雪が降り始めた。うう、夕刊時も降られる事になるとは…私は夕刊を配っていないからその辛さは分からんが、ナンボかでも辛さを知ろうと店に見学に行く事にする(喧嘩を売りに行ったとも言う)。あと、新聞の到着時間は何時ごろになりそうか、も知っておきたかった。雪の日は新聞原稿の締め切りが早まる事があるから。
 
  17:00、CRM80でうっすらと積もりはじめた雪の中、尻を振り振り走らせ店へと行く。む〜かなり激し降り…一気に積もりそうだ。水分の多い重い雪、積もりはじめたら一気に積もる。
  店で明日の到着予定時刻を知る。到着時間は60分早くなるそうだ。普段の到着は01:40頃、と言う事は「無事に」到着すれば00:40、01:00から配りはじめられれば暗いうちには配り終われそうだとちょっと思う。この時点で配達に掛かる時間は5時間を見込んだのである。
  ヘロヘロになった配達員がぞろぞろ帰ってくる、苦痛に満ちた表情…ううううううう、明日はどうなるんだ?
 
  とにかく「フツーには配れんな」の結論を出し(当然且つ単純)、店を後にする。…もう既にCRM80には雪がごそっと乗っかっている。道もええ感じに積もりはじめている…まだ人通り車通りが多いから完全に積もってはいないが、これから人が少なくなれば踏み潰される事も無くただただ降り積もるのみ、その積もり積もったところをまず激走し道を作っていくのが新聞配達員という事になる。
 
  新聞が「無事に」到着すれば…の期待を持ち続けるが……「無事」には到着しなかったのである。
 
  この夜のニュースで、列車が止まり勝手に線路に降りて駅に向かって歩く人々の映像が放映されていた…

1998年1月9日 金曜日 未明 雪  01:00頃
第1章・根拠の無い、妙なやる気
    雪は降り止まず益々勢いを増している。一応到着予定時刻は00:40だから、とにかく早目に行って早めに配達を始めたかった。だから01:00に家を出る事にしたのである。
  防寒の為に結構着込み、その上から合羽を着る。雪の日は合羽が意外と役に立つ…暑くないから着る事に抵抗も無い。ただし後に大汗をかく事になるのだが…
 
  家を出ると目の前は…
  まあ、こうなっていた。手前右側にみえるのは、雪に埋もれたCRM80の慣れの果て、である。路地なのでだーれも歩いた跡も無く…いや、猫が歩いた跡があった(爆)
  雪を掻き分けっ、て程でもないけど、ガシガシ雪中行で店に向かう。 ちなみにゴム長なんて物は持っていないので、しょうがなく履いたのが
  オフロードブーツ(大爆)  重い重い。でも、カブ乗っている間は別に重くても構わないし、雪掻き分け歩く時には感覚も麻痺しているから(笑)どうでもよかったのである。
  「押し」に強いエンデューロブーツ、ソールがしっかりしているのでこれが結構グリップする。この後数日続く氷上配達でもしばらくこれ履いて配達を続ける事になった。
  ついでに転倒で痛い目見ない為に、膝カップを入れ、肘カップまでつける念の入れ様。合羽といってもGORE-TEXのエンデューロジャケットなので、いわばまんま「オープンエンデューロ」の格好なのである。車輌がカブで、やる事が新聞配達なだけ(だけ?)、いつもの配達の意識はレース(コンペ)だけど、ここまで装備に念を入れる事はなかった…家出る時点から妙なやる気だったのである。だって、ここから萎れていたら何時終わるか分からない配達をしようって気にもならないじゃん。自分で自分を奮い立たせていたのよん。
  ただ、そのやる気の拠り所みたいなものは…なんか曖昧なのよね。余りにも非日常的な事なのでハイテンションになっていたとしか言い様が無いね、さてこれが何時まで続く事やら。

1998年1月9日 金曜日 まだ 雪  01:10
第2章・いつもとは違う…
  店までの道程で残り400mは線路際の道を歩いていく。この線路を旅客扱いの列車が走るのは00:25の下りが最後である(所謂終電)。だから路盤と軌道にはもう雪が積もっているはず。
  首都圏の路線であるから多少の積雪でも架線が垂れてしまったとかポイント故障とかで運休になってしまうこともある。事実、私の高校受験の年の2月1日、この日も大雪が降って始発からこの路線でも運休になった。…この路線の列車使って受験に行かなければならないのである(T-T)  まあ結局は運休を無視して或る手段で無理矢理受験場所に行ったのだが、受験開始が5時間も遅れたのである(列車の運休により)。そして面接がカットされたりしたな〜
  …あの時も凄まじかった、列車の運休がとんでもない影響を及ぼした。
 
  閑話休題。その路盤と軌道を見てみると…路盤は当然雪が積もっているのだが、軌道には雪が積もっていない…それも最近列車が走った跡さえある。
  んん?終電が終れば回送すらない路線だぞ?何故だ??と疑問に思いながら道を歩いていったのだが、遠くで踏切の警報機の音がする。保線車輌の巡回か、とも思ったのだが、迫ってくる車輌の走行音が…うを、旅客車輌やんけ!!
  思わず写真を撮ってしまった。もちろんフラッシュはたいていない、走行中の列車に向かってのフラッシュは下品だ。
  謎はすぐ解けた。軌道に雪が積もらないように列車を走らせ続けていたのである。これまでは積もり放題にしておいて悲劇を呼んだのだから。まー賢明な策ですな。ちなみに30分毎の運行であった。
 
  普段の2倍時間が掛かり、店に到着。…うう、なんでこんなに人がワラワラいるのだ!?(それも専業だけ)でもいつも店に出て行った時の雰囲気とは違う、そう、折込作業をしていない。つまりは到着予定時間になっても新聞は到着しなかったのである。目論見は外れた。
  店の前は、折込搬入が頻繁だったのか(翌日は土曜日だ)踏み固められたり融けたりしていた。そういうトラックはちゃんとチェーン装着で臨んできている。おいおい、新聞運送のトラックはどうした〜(T-T)
  雪が積もり過ぎると店の軽1BOXも始動不良となり、いざ使いたい時に使えないので、エンジン動かしっぱなしで暖気をしていた。この軽1BOX、4駆なのでチェーン無しでも結構ガシガシ走っていける。…後日、結構凍結した路面でありながら1度だけ私は運転の練習をした(^^;;  ちなみに1年前にも1度乗って右ドアを凹ましている(爆)
 
  一応店の中から見える光景も写真に撮っておいた。
  この目の前に、道路に沿ってカブを停め新聞を積載するのだが、ここまで積もっていると停められない。いざとなれば店内で積載も出来るのだが最大で2台しか持ち込めない、しかも新聞は遅れているから、多分配達出発の時間が来た時には配達員が一斉に積載にかかるものと思われる。…新聞は当分来そうにない、雪かきして暇をしのぐ事にした。まだまだ時間はある…

1998年1月9日 金曜日 降り続く 雪 01:50
第3章・自主ゲロ
  雪かきはすぐ飽きた(笑)  なにしろ腰痛持ちなのでこういう作業は辛いのである。そこに雪の配達は初めてになるうちのお母んが店に出てきた。自転車での配達、時間が掛かるぞ〜と前日に吹き込んでおいたので早目に出てきた。
  しかしまだ新聞は到着しない。雪かきも飽きて放ったまま…うちのお母んが雪かきをはじめた(笑)  こういう作業が得意、なにせ農家出身だからね(謎)。これで私も完全に手持ちぶさたになってしまった。
  そこで考えたのが…私の配達区域はどうなっているか?である。どれくらい雪が積もっていて、配達になるのかどうかが気になってしょうがない。……何故かハイテンションな私、カブに乗って2区域目を一回りしてくる事にした。3区域目は行って帰ってこれなくなると辛いのですぐ近くの2区域目を選んだ。
  この時点でまだカブにはチェーンを装着していない、と言うか雪中配達が久しぶりだった為チェーンが何処にあるかも忘れ去れれている、しかも前回の雪中配達の後店舗を改築しているので、その時にどこぞへ行ってしまっていた。うう〜ん?配達はどうするんだ?
  でも、前回の時はチェーン装着しないで配達してしまったし、今回も上手く行くのでは…?と甘い考えをしていた。
 
  とにかくカブを駐輪場から引き摺り出す段。しかし、目にした光景は…
  雪に埋もれたカブ…(T-T)  何とか掘り起こしてキックアームをキックキック。おおぅ、1発でエンジンが掛かる。さ〜すがカブだね〜始動はすこぶるよい。でもずっと冷やされていたのでアイドリングが…ちょっとキャブをいじっておく。
  この時点で店の前(積載に必要な部分)は雪が奇麗にかき終わっていた…アクセルターンをかまし(雪だから簡単簡単)取り敢えず大通の方に出て行った。
 
  大通は更に雪が踏み固められ融けていた。そして何故か今の時間帯にしては人が多い…そしてタクシーも。なるほど、終電も行ってしまったから遠くの駅から歩いて帰ってきた人々か〜タクシーにも乗れなかったのだろう。
  2区域目でこの大通はホンの30mしか通らない、すぐ路地に入っていく。もちろん順路を追っているので路地に突っ込んでいく…と、うげ、すごい事になってる(T-T)
  ……なんだか、勢いが死んだらそこでかっぽじり続けそうな感じの積もり方。うう、勢い殺せんやんけぇ〜(T-T)  2足2輪でシングルとラックを作っていく。後に配達で通らねばならんのだ、こんなところを…
  奥路地に入れば入るほど人が通った跡も無くなり、まっさらな積雪のみの道が広がる…不用意に突っ込むと抜け出せなくなりそう(T-T)  でも出来るだけ突っ込んで道は作っておきたい。
 
  そうそう、積雪では直進は以外と簡単。だただた前方を踏み固め続けていけばいいだけだから。しかしUターンや右左折が侭ならない。轍を越えるは辛い…積雪に斜に突入するのは意外と難儀なのである。
  あと右左折か…ブレーキをいつもの通りに使ってしまうと即ロック、何処までも、自分の止まりたいところを通過して行ってしまう。カブをバンクさせると今度は転倒…ブレーキが使えない。
  フロントブレーキは益々。リア掛ける分には尻が流れるか停まらず真っ直ぐ行ってしまうだけだけど、フロントをチョコっとでも掛ければいきなりロックして切れ込む、そして転倒。
  バランスがとんでもなく要求されるのが雪中配達。実は氷上配達の方がもっと大変なんだけどね。
 
  で、と或る林間の道。全く歩行者車輌が通った跡が無い。…林間のくせに積雪が激しい。木に積もった雪が落ちてきて益々積み重なっているのである。
  …うう、突っ込みたい、でも突っ込んだら酷い目に遭いそうだ……うううううううっ!だめだぁ〜若いタギリは抑えられん!(謎)突っ込んでやるぅ〜〜〜〜〜るぅるぅるぅ………あうあう、止まってしまった(T-T)
  エンジンは唸る、前にも後ろにも動かない。中途半端に斜に突っ込んだのがまずかった。しょうがないからカブから降りて周りの除雪。なんか…疲れた〜気持ち悪い(T-T)  駄目、押しても引いても雪かきしても動かん。参った…
  このまま進んでいく事は諦めた、あと100mは進まんと抜け出せん。何としてでも逆戻りしなければ…頭に血が「かっ!」と上る。おもむろにカブに跨り、アクセルをぐわっと開けしなハンドルを力強く、高く引き上げる…フローティーングターン。
  そこまでに作ってきたシングルトラックに何とか復旧、ほうほうの体でその道を抜け出す。はぁ〜空荷で良かった。新聞積んでいたら逃げてしまっていたかも知れんぞ(笑)
  この道は配達順路上かなり重要な道ではあるが今日の通行はまず無理、回り道もやむなしの結論をだし店に戻る事にした。ここまで道を作ってきた事と除雪でかなり疲労が溜まっていた。…こんな事で力を使ってしまうなんて。バカ。
  …配達中にまたフローティーングターンをするとは、まだ知る由も無い。
 
  来た道を帰るのも芸が無いと、帰り道は2区域目を外郭に囲む道を通っていく事に。ある程度人通りがあるので走り易い(あくまで路地奥に比べて、ではあるが)。道を尻振り振り足を付き付き走り続け、店まで残り400mの直線道路、つまり朝店に出ていく為に歩いてきた線路沿いの道。
  とある工務店の前、ニュルニュル走行している目の前5m、それは突然起こった。
ドスン
突然の事だから何が起こったか一瞬で分からないのはいつもの事。ただ、雪がバサッと落ちたと共に視界が遮られて道の向こうが見えなくなった。
  …なんと、立木が雪の重みに耐え切れず折れてしまったみたい。それが横倒し、倒木となって折れたのではなく、木の折れかたが斜で、路面に突き刺さるように落ちてきたのだ!
  これは恐ろしい事…しかしその時は「あー、木が落ちてきたんだ。この道通るのは結構大変かも」位の感情しか湧かなかった気がする。事態の恐怖が込み上げてくるのは店についてぬくい茶をすすりながらの時だった。「直撃してたら死んでたがな」と。
  折れたのが工務店の前だったので、09:00頃その木は取り除かれたそうだ。
 
  そんな事もあったが、店に怪我もなく辿り着いた。

1998年1月9日 金曜日 しぶとく降り続く 雪 02:50
第4章・発掘
  店に戻るともう既に02:50…あうあう、1時間も雪遊びをしていたのか(笑)  とにかく「普通には配ばれん、大変だ」と人々に伝えると「当然でしょう」とあしらわれる。ま、そりゃそうですわね(T-T)
  勝手にへろへろになってきた私にぬくい茶が出てくる…おお、アリガトウねぇ。茶をすすりながら今後の事を考える。新聞はまだ来てない、何時来るか分からない。それに新聞が来ても配達がままなりそうに無い。チェーンは絶対必要、それ、どうしようかな…と悩んでいたら、と或るオヤジが錆錆のチェーンを持ってきた。
  むむ、何処からそんなものを?聞くところによると、かつての駐輪場跡地の積雪の下のまた下の土の中から発掘してきたそうだ。店舗を建て替えた際、その辺りに固めて放っておいたそうだ。…そうだったっけ?わたしゃそんな事覚えちゃいなかった。
  それにその辺りには犬がいたはず、いんや、今でもいるぞ…?そのチェーンをよくみると…犬の毛と思しきものがたくさん付着している…(^^;;  うわぁ(--;;;素手で触りたくないわ、匂いなんか決してかいじゃいけないわ(笑)
  しかし錆びていようがなんだろうが、チェーンに変わりはない。錆びがすごくて動きが悪いが、CRCを塗ったくって無理矢理動きを滑らかにする。うむ、何とか使えそうだ。チェーンが切れていなかったのも幸いした。
 
  さぁ装着しよう…って、どうやるんだっけ?以前見たのはうろ覚えである。そうだそうだ、ゴムチューブ4本くらいで縛り付けるんだったな。うむうむ、それではチューブを用意しよう。店の倉庫からチューブを引っ張り出し、適当な長さにちょん切る。
  用意は万端、これからチェーン装着講習会の始まり。周りに人が集まる。指導者は一応チェーンを発掘してきたオヤジ、施行者は私。センタースタンドを立ててリアタイヤを空回りさせながらチェーンを一周させ、最後の鈎状のところで連結!連結…連結でけへん(爆)  錆びで穴が埋まってた。
  うむぅ、どうやって連結させる?ここちゃんとやっとかないとリムに絡んで大変な事になるじょ。そしたら指導者がバールみたいなマイナスドライバーを持ってきた。…これでかっぽじって広げろってことか。あいあい、分かったワカッタ。
  固着した部分を力任せにぐわっと広げる…おっ、広がったじゃん。これで連結が出来るわ〜よしよし、繋がった。あとはチェーンが空回りしない様にゴムチューブでリムに括り付けるだけだわ〜
  装着完了。
  なんか雪がこびりついているのは、試走で雪中走行をしてきた為。装着前はリムのところはスポークが見えなくなるほど雪が噛んでいてただの「円盤」にしか見えない様にすらなっていたのだ。これを装着した事によってどれだけ見違える事になるのか。楽しみでもあり、恐ろしくもあり、まだ見えぬ行く末が案じられるのである。
  装着講習会を終わり、他の配達員も発掘チェーンを装着始める。
  とはいえ、雪の配達が初めてな配達員がほとんど、1度見たくらいで覚えられるものではない。新聞屋歴うん十年のオヤジが個別について指導する感じとなった。

1998年 1月9日 金曜日 何時まで降ってやがるんだ 雪 03:50
第5章 待望か絶望か
  チェーンの装着をしてしまうとどうしてもその効果の程が知りたくなる…やっぱりと言うか何と言うか、また雪中走行に繰り出す事にした。全く、懲りない奴だから私って。だって〜気になるんだもの〜オヤジたちも「やっぱり行くのね…」と呆れている。うむ、呆れて結構。自覚はしているから安心し給え。
  では早速…とカブに跨る私に駆け寄る或るオヤジ「行くならついでに煙草買ってきてくれ」といわっしゃる。むむ?今の時間帯では自販機では買えんし、煙草売ってるようなコンビニまで行く気はないぞ。そう伝えると「○○薬局の横のは今の時間でも売っているんだわ〜」だって。う〜む、そっち方面に行く予定はなかったのだが、まあいいか、3区域目に行く途中でもある、そのまま3区域目に斥候に行く事にした。
 
  ほっほっほっほっほ〜!!うはははははは!全然違う!前に進む!雪が積もっているところだろうがシャーベット状のところだろうが突進んでいく!いいねぇいいねぇ、さっきの苦労は何だったんだ?
  もう、調子扱きまくって足跡も無い積もったままのところにまた突っ込む…あうあう、進みが鈍くなる、マズイ…!しかし新聞を積んでいないから尻を引くのも簡単、リア荷重でガシガシ進んでいける。いや、こりゃええわぁ〜
 
  で、その自販機の前に到着。無事ブツを手に入れる。あとは3区域目方向に向かうだけ。店の方向とは正反対。
  さて行くかい、とカブに跨り身構えたその横をトラックが通り過ぎた…幌付きの荷台、側面には読売新聞…うを、新聞配送のトラックぅ〜〜〜〜!!!!!そうか、来たか、とうとう来たか!!こりゃぁ斥候なんて呑気な事は言っていられんぞ、店に戻らねば!
  その場でアクセルターンをかまし(チェーンを付けたままするなっちゅうに)そのトラックを追いかけ追走する。
 
  04:00ちょうど、店に待望の新聞到着。
  もう既に配達員は全員到着している、一斉にトラックに群がり新聞を奪い取っていく…そんな中、私といえばこんな写真を撮っていた訳。でもね、頭数がいるもんだから、私が「さぁいくぞ!」なーんて言う暇も無く、一瞬で新聞降ろすの終ってしまったのである(^^;;
 
  但し今日は金曜日、紙が到着したから紙分けてそのまま配達へGO!とは行かないのよね。折込入れにゃ。私は折込作業にはタッチしていないから指くわえてみているだけ、なんだけど、元々店へは早く出ていく事が習慣になっているので私の分の紙分けは一番最初に終わる。
  まずは1区域目分の20部強をさっと組んでもらってそれをさくっと配りに行く。その間に本格的な配達となる2区域目を組んでいるという寸法。1区域目までは雪が半端に踏み固められた道をずっと行けばいいだけなので、チェーン装着のカブにしてみればなーんてこと無い、スピードは出せんがね。とっとと配ってとっとと店に戻る。
 
  店の前に溢れかえる配達員達。各々カブなり自転車なりを並べ新聞を積む作業に取り掛かっている。一種、悲壮感みたいなものも漂う。確かに新聞は到着した、しかしこれから繰り広げられる配達そのものがどうなるか、何時終わるか、全く未知の世界に特攻しなければならないのだから。黙々と作業は続く…
  さぁ、私も新聞を積んでさっさと行かねば。人の2倍配っているけど掛る時間は2倍では無い…それは雪なんか積もっていない時だけの話。今日はどうなるかなんて私にだって想像付きやしない。雪が降ってしまうとカブや自転車はただの新聞を積んで歩く「だけ」の、便利な道具と化す。操作のし難さ…ブレーキの掛け方、曲り方、乗ったままでも何とか進ませる方法、他の配達員と余り差が無くなる。なにしろ歩行で配達の部分が極端に増えてしまうのだからね〜下手すりゃ人の2倍以上の時間が掛りかねないって事よ。
 
  とにかく新聞を積んだ、躊躇っている暇無し、配達に出る。04:15の事。

1998年 1月9日 金曜日 曇 後 晴
終章・戦い済んで
  …全くおかしな話なのだが、肝心の配達中の記憶ってのがほとんど残っていない。カメラを持っていく余裕もなかったし。記憶も空ろになるほどふらふらになりながら配達していたんだろう。気が付いた時には太陽が仰角30度位の高さにまで昇っていた、それは鮮明に覚えている。「冬場、こんなに明るくなるまで配達していたのは初めて…」な〜んてね。
  積雪、読者にも配達員にも一種の諦めがある。だからと言って呑気に配るつもりなんか無かった、しかしそうしたくなくてもそうなってしまうのである(T-T)  そこのところが苦痛で苦痛でしょうが無かった。
 
  あ、他に記憶に鮮明に残っている事といえば、2区域目不用意に突っ込んだ路地奥で、またまたカブが雪に埋もれて動かなくなって新聞を積んだままフローティーングターンをかまして突破した事。チェーンの威力にかまけ過ぎた。
  それと、3区域目配る時間はもう既にかなり遅い時間だったので、家の前で雪かきをしている読者にかなり遭った事。しかし「遅い!」と文句は言われなかった。「雪の日の配達、御苦労様」、皆々に言われ続けていた。うんうん、なんて嬉しいお言葉なんでしょう。その度に息を吹き返した気分だったっけね…気になったのは旦那が結構いた事。職場に行くのを諦めていたんだろうか?(^^;;
  雪の日の配達にも関わらず「遅い!」と文句を言われ続けた配達区域があったそうだ。そういうのは…その区域担当者の手腕に因るところが大きいような気がする。
  まあ、寒いのに汗をだらだら流しながら配達を無意識でこなして行った…のだと思う。 一面が白いと闇であってもかなり明るかった。雪明かりというのであろうか?そして何もかも雪に埋まってしまったかのように静かだった。
 
  好き好んでやった事で苦しい思いをすると、その時は「もう2度とやるものか!」とも思うが、時が経てば経つほど「またやりたい」と更に思うもの。私は配達が楽しい、好き好んでやっている。3区域目配り終えた時「やっと終った、もう嫌だ」とも思った、しかし「またやりたい」なんて思う事は全く無い、次元の違うお話。
 
  片側2車線の幹線道路を、お天道様に照らされながら店に帰る。新聞積んでいなければこっちのものだわ、幹線道路をたらたら流していたセルシオをぶっちぎる!(爆) だって、こういう時しかカブでセルシオをちぎる機会なんて無いよ…(大馬鹿)
  とにかく店に帰着。もう既に折込を組む昔姐さん達が来ていた。09:30のこと。…5時間15分も配達していたなんてのはもちろん初めてである。こんなに時間が掛かるなんて…いや、想像できたことか。
  昔姐さん達、普段は4輪で来るが今日はチェーン巻いて暖気して、積雪で恐ろしい道路を走ってくるなんてことはとてもではないが出来なかったそうだ。1人は歩いて、1人は列車で店に出てきたそうな。そういや事務の爆烈姐さんが居ない…「何で?」と聞くと「今日は店に行くの無理そう…休む」と電話があったんだと。まー、確かにかなり遠いところから来ているからね。
  ヘロヘロになって帰ってきた私にぬくい茶が出てきた。うむ、有り難いねぇ。ブーツを脱いでみると…あうあう、足がふやけてる(T-T)  グリップはよくても防水の方はさっぱりなオフロードブーツ。更に皮製であるから水を吸って益々重くなっている。しかし配達中はさっぱり気にならなかったわ。
 
  その時間になってもまだ帰ってきていない配達員が2名。皆して難儀しているのか。そーかそーか。
  ちなみに、私は誰にも手伝ってもらうことなく配りきったぞ!当然じゃぁ〜〜〜〜!!(T-T)  転倒も無し!!!
  (結局配達をせず、誰を手伝うことなく、06:00に帰ってしまったオヤジが約1名居たそうだ(--##)

 追記・後日談
  しばらくの間はチェーンは装着しっぱなし。積雪は、降ったその日だけのものではない。特に1月9日は朝から晴れて多少は融けたが全て融けきったわけではない。翌日からはそれが凍結し、積雪以上の難儀な配達になる。
  そう、何より恐ろしいのは積雪よりは凍結。積雪はタイヤやチェーンが雪に食い込むから或る程度グリップするから多少はまともに走れるのだが、凍結路面ではグリップを期待する事が出来ない。チェーンが本領を発揮するのも凍結路面である。
  それに「積雪」の大義名分があっての遅配容認であるが、凍結だけではまず読者は容赦してくれない。本当に大変なのは積雪の翌日以降なのだが…だから1月10日からはまた普段通りに配達をこなす事を余儀なくされる。そして積雪より怖い凍結…配達への神経のすり減らし方は尋常なものではなかった。
 
  1月9日、チェーンが全ての配達員に行き渡ったわけではなかった。配達部数が多い配達員、配達区域が大変なところ(坂が多いとか)を配る配達員に優先的に使われた。だからチェーンを使わず配達をこなした配達員も居た、もちろん苦情も出た。
  そんな配達に懲りたのか、4日後に店でチェーンを大量に購入。
  一人1個の支給。確か1個5000円くらいだと聞いた。まとめて20くらい買ったと思う、ダンボール箱で届いたから。
  新品はさすがに違う、チェーンそのものの動きがいい。だから装着に癖が無くあっさりと装着可能。嬉しかったぞ〜 CRC吹いて丁寧に丁寧にしまっておいた。
 
  チェーンも行き渡り、装着の方法も浸透した1週間後の15日、また雪が積もる。9日とほとんど同規模の積雪。今度は新聞の遅着も無く(それでいて1時間早い到着)、いつもより早くに配達に出られた。この日掛った時間は4時間。まだ暗いうちに配達を終らせる事が出来た。
  しかし…その後日はまた凍結路面、9日の根雪もあり2月の下旬までしぶとく残っていた雪もあった記憶がある。
 
  もちろんチェーンはまたしばらくの間装着しっぱなし。配達で通る道全てが凍結しているわけではない、人通りの少ない日陰とか路地奥とか、自宅の前ですら雪かきしていない道とか…およそ全行程の半分くらいの割合だろうか。ただし、そんなところも当たり前の「道」として認識するのが新聞配達員、配達順路。容赦無く通らねばならない。そういうところの雪や氷はマズイ残り方をしているのでチェーンがあるのと無いのでは大違い。
  日向や大通は雪が融け去りアスファルトが剥き出し、雪や氷が残る場所に行くにしてもそういうところは通らねばならない。チェーンを確実に痛める。また、凍結しているところでも完全に氷に覆われている事も少ない、薄くはなっているだろうし、チェーンで掻いてアスファルトに達する事もあるだろう。そんなところでブレーキを掛けると「ガリガリ…」と音がする。チェーンを摩耗している音である。
  そんな事を続けているとチェーンは切れてしまう。
  こうなると切れたチェーンはぶーらぶら、フェンダーの裏やリムとかにガンガン当たり、外装や駆動系の重要な部分を痛めかねない。最悪何処かに絡んでしまったらチューブが飛び出してハブに絡んだどころの騒ぎではなくなる可能性もある。
  チェーンを装着している時はスピードの出し過ぎ厳禁、急発進急停止も然り。
 
  配達をしていて思った事難儀した事。
  積雪の後、大抵の家庭では家の前の雪かきをする。大体が、門が開く程度、出入が出来る程度。家の目の前全体を掻く人は少ない。
  さて、その掻いた雪を何処にやるか…これが押し並べてポストの前だったりする(T-T)  ふだんカブに乗ったまま配る事が出来る読者宅でもそれが不可能になる。それこそ狙ったようにポストの前だけに積んであったりする。ただでさえ普通に配れないのに、カブで降りて配らなければならない読者宅が増えたのは、そのまま配達時間の延長に直結した。
  新聞がポストに入っている事が普遍的な事だと読者が認識しているのならポストの前に何か置くってのは止めて欲しいわ。しかしそれでもポストに新聞を入れる事が出来るだろうと思ったんだろうね…実際、そんな状況になっていても朝ポストを覗いたら新聞が入っていたハズだから。新聞配達員がどうやってポストに新聞を入れているかが知られていないって事かしら。
  とにかく
ポストの前に掻いた雪、積まないでくれ(T-T)
  他には轍かしら…一戸建てが多い住宅街をカブに乗ったまま配る時、道の左右にあるポストを、ジグザクに移動しながら配る事になる。すると道を斜に移動する事も多くなるのだが…轍があると、真ん中の「山」を乗り越える事が難儀である。氷の山に斜に突っ込まなければならない…まずまともには乗り越える事が出来ない。前輪が通過しても後輪が通過できない。
  結局、1本の「レール」をずっと直進し続けるだけ、ってことになるか、転倒覚悟で乗り越えていくだけ(…私は後者をし続けた…)。あれだけは文句を言う相手が居ないから、しばらくは泣く泣く配達を続ける事になったのでした。


総合へ
私的新聞配達へ